イスラム教徒の村 “リブノヴォ”
ソフィアから南西に車で4時間、人里離れた山奥にある村 リブノヴォ。
人口2,500人ほどの小さな村には、『ポマク』と呼ばれるイスラム教徒が住んでいる。
村の主な産業はタバコの葉栽培。
夏季はソフィアや海外(イタリアやスペイン)に出稼ぎに行く男性が多い。
女性は村の畑や工場を手伝う。
リブノヴォの人達は基本的にこの村で生まれ育ち、そして結婚して村で一生を過ごす。
そんな閉鎖された山村だが、挙式時には一風変わった儀式を行う。
それは…
1. 新婦宅の庭や軒先に「寝室」や「リビングルーム」を展示
2. 広場で村中の人が民族ダンスや行進
3. ゲリナと呼ばれる白塗りメイク(花嫁)
である。
挙式は2日間、11月~3月の冬の間に行われる。
この記事は2019年末に挙式したジェルマさん(24歳・左から2人目)と、ネブセさん(19歳・左から3人目)の取材記録です。
1. 初日~午前中:婚礼道具の飾り付け
挙式初日の朝。新婦宅の庭で忙しく動く人達が居た。
新婦の親族や知人が集まり、婚礼道具を庭に展示する作業中だ。
冷蔵庫や洗濯機などの大型家電も当然外に
この風習は、新郎新婦の新生活を近所の人や友人に披露すると共に、装飾の規模や部屋の再現度により新婦家族の裕福さを誇示する意味がある。
テレビボートなど大型家具の設置は男性陣が、
細かい飾り付けは女性が担当。
若い女性(新婦の兄嫁)に皿の並び方を指示する義母。
それを眺める年寄り衆。
リブノヴォの挙式は村の住民を巻き込む一大イベントである。
実際と同じく配置された(ちょっと装飾過剰気味な)リビングルーム。
こちらはベッドルーム。
これらの家財道具は挙式後、2人が住む新郎宅へ運ばれる。
*リブノヴォでは婚姻後は女性が男性宅に住む。新郎実家に経済的な余裕がある場合、庭に家を増築することもあるが、通常は新郎宅の1部屋を与えられることが多い。
近所の人が見学にやって来た。
毛布は娘さんが産まれてから、両親が毎年1枚ずつ買い揃えたとのこと。
新郎宅を出発する新郎の兄
飾り付けが一段落したところで、新郎宅より家族がジプシー音楽隊を連れて到着。
3. 初日~午後:広場でひたすら踊る
午後は村の中心地で民族舞踊を踊る。
この2日間は、村の人ほとんどが集まるという。
踊るのは若い男女。
午後5時。日が暮れても踊りは続く。
午後8時。
気温計は-3度を示すが、この気温計は壊れているはずだ。実際の体感気温は-13度ほどだった。
標高が1,000mもなるリブノヴォの夜はとても冷える。
だが村民は軽装で寒がる様子もない。(イスラム教徒だが少量なら飲酒も良いらしい)
一通り踊り終わった午後9時ごろ、新婦の家に集まりヘナで指先を染める儀式をする親族の女性。
魔除けや幸運を呼ぶ意味があるとのこと。