観光時間の目安:2~3時間
ゼムンは中世から近代にかけて、ハンガリー王国やオスマン帝国、オーストリア・ハンガリー帝国、ユーゴスラビア王国など多国家による支配を受けました。
特にハンガリー王国と、オーストリア領下の影響を多大に受けた建物や街並みは、ベオグラードとは異なる歴史の歩みをうかがうことが出来ます。
ゼムンの地図
ここではゼムンの4地域「ドニィグラド」「ガルドシュ」「チュコヴァツ」「ゼムンスキ ケイ」の特徴と見どころをご紹介します。
タクシー: ベオグラード中心地から10~15分(1,200dinほど)
バス:路線に依り停車場所・系統が異なります。
利用の際はホテルの人に経路をご確認ください。
① 街の中心「ドニィ グラド」
ドニィグラドは住宅や市場、店舗など人の集まる場所です。
バスで来る場合はこの辺りで降ります。
交通量の多い「グラヴナ通り」

車線の少なさに反比例して交通量の多いグラヴナ通り。
両側には銀行、衣類、ファストフード、薬局、家電製品店などが並ぶ商業通りです。
マギストラトスキ広場 (Magistratski Trg)

グラヴナ通りからドナウ川へ向かって少し歩くと、マギストラトスキ広場に入ります。
ここはカフェやレストランが並ぶ歩行者ゾーンです。
統治時代の様子を残す建築物

ゼムンには文化財として保護されている建物があり、オーストリアの建築家により1855年に建築されたスピルタハウス(Spirta House)もその一つです。
窓や扉上のデザインは、教会をイメージしたゴシックリバイバル建築になっています。


その他にもゼムンには、他国文化の影響を受けた建物が多く残されています。
ゼムン市場

ゼムン市場は野菜や果物、精肉やチーズ、衣料品が揃う青空市場で、週末はゼムン住民で賑わいます。
広場の中央にあるのは聖マリア・カトリック教会です。

ドナウ川で当日釣れた魚も並びます。
鯉や鱒、ナマズなどの川魚はグリルやフィッシュスープ(後述)に調理します。
②ドナウ川周辺観光「ガルドシュ」
ガルドシュ塔やドナウ川沿いのレストラン、遊歩道が観光地として人気のガルドシュ地域です。
写真ポイント「ガルドシュタワー」

ガルドシュ要塞は、中世期にハンガリー王国がオスマン帝国への攻防のために重要な役割を果たした場所です。
それから500年後の1896年に、ハンガリー人のパノニア平原入植1000年を祝うために、この場所に記念碑としてガルドシュタワーが建てられました。(ミレニアムプロジェクト)
そのため、ガルドシュタワーは「ミレニアムタワー」とも呼ばれます。

時間があれば、400mほどの坂を上ってガルドシュタワーまで行ってみましょう。
ドナウ川を見下ろす景色は、写真スポットとして旅行者に人気です。
タワーに登らず撮影できる展望場所があります。
聖ニコラス正教会

ガルドシュ要塞にある聖ニコラス正教会は、オスマン帝国の支配が終了した18世紀初旬に建設されました。

内部には18~19世紀に掘られたイコンが飾られています。
魚料理レストラン “シャラン”

ドナウ川沿いには沢山のレストランが並んでいて、川で獲れた魚を振舞っています。

セルビアでは、鯉などの川魚と玉ねぎ(香味野菜)を煮込んだフィッシュスープが有名です。
赤い色味はレッドパウダー(スイート)の色です。
セルビア料理の一覧はこちらです。→ セルビアレストランの注文の仕方
ビールとよく合う“ギリツァ”

川辺のレストラン・パブでは、小魚のフライ “ギリツァ”もおススメです。
ニシンやイワシなどの小魚にコーングリッツを付けて素揚げにしたもので、ビールと良く合います。
夏のメニューとして有名です。
ドナウ川散歩

ドナウ川に沿って遊歩道があり、市民の散歩コースになっています。

野生の白鳥も沢山います。
③ オスマン帝国の名残「チュコヴァツ」
ドナウ川とは反対の場所にあるチュコヴァツは、細い路地や古い建物を残す住宅街です。
地下回廊「ラグム (Lagums)」

ゼムンの特徴の一つに、縦横に掘られた地下回廊「ラグム」があります。
ゼムンは他国からの侵略を防ぐ重要な場所だったため、オーストリア統治時代に軍事目的で移動するための地下トンネルが発達しました。
また住民も食糧庫として使用しました。
後になり、ここに家を建てた際 地盤が崩壊するなど問題が起こったため、殆どのラグムは撤廃されましたが、ラグムの入り口が残っている場所もあります。
ホッキョクグマ カフェ

ホッキョクグマ カフェ(Kafana Beli medved)と呼ばれる古い建物は、17世紀の文献に登場することから、オスマン帝国時代に建てられたと言われています。
当時は1階をカフェ(居酒屋)、2階を宿泊所として利用していました。
店内に “北極グマ”の写真が飾ってあったことが名前の由来で、現在も保護されているベオグラードで最も古い建物です。
④ ボートカフェやビーチなら「ゼムンスキ・ケイ」
大戦争島とドナウ川を含むゼムンスキ・ケイは、船を改装したカフェやレストラン、クルーズ船、ホテルが多数ある注目エリアです。
ボートレストラン

船のデッキをテラス席にしたボートレストランは、ドナウ川を見ながら食事やカフェをするのにぴったりの場所です。
ドナウ川からボートで乗り付ける人も居ます。
ボートホテル

ドナウ川沿いに建てられたボートホテルでは、自然の中で一味違う滞在を経験できます。
2名利用で5千円~という価格から バックパッカーや若い人に人気で、ボートホテルは毎年増えています。
ユーゴスラビアの栄華「ホテル ユーゴスラビア」

1969年にオープンしたホテル ユーゴスラビアには、エリザベス女王2世、リチャードニクソン、ジミーカーター、ニールアームストロング(宇宙飛行士)、各国の王族、ティナ・ターナーなど沢山の著名人が滞在し、当時のユーゴスラビアの勢力を誇示します。
2013年に一部が改装され、現在はカジノも併設されています。
大戦争島のビーチ

2平方kmほどの小さな島は、中世から世界大戦時までベオグラードの軍用拠点の一つとして使用されました。
そのため「大戦争島」という物々しい名前が付けられました。(近くに小戦争島もあります)
現在 島の約3分の2は、鳥類の自然保護区になっています。
リドビーチは島の北端にあり、ゼムンの遊歩道から軍の桟橋を渡って行きます。
ゼムンの住民はベオグラード人じゃない?!

ベオグラードの1区であるゼムンですが、独立した歴史を歩んできたため 住民は「自分達はベオグラード人とは異なる」と言い、自身を「ゼムンチ」と呼びます。
ゼムンチは “連帯感が強い”ことが特徴です。

ゼムンは石畳や細い路地・坂道が多く、生活には不便がありますが、住民は街の景観を保つ努力を怠りません。
これもゼムンチの特徴と言えます。
セルビアには「ベオグラード男」「ノビサド女」のような呼び方があります。→ 「ベオグラジャンカ・ベオグラジャニ」って?

