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セルビア館の「未払い問題」 大阪万博で浮上する外交リスク

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万博関連の「未払い問題」が連日報道される中、セルビア館において複数の日本企業が支払いを受けていないと証言しています
この記事では、セルビア国内の報道内容と矛盾する点や、名誉毀損の可能性について考えます

セルビア館の出展費用と運営体制

画像: Blicより

セルビア経済誌「Magazin Biznis」によると、セルビア館の建設は、セルビア副代表 Žarko Malinović(マリノヴィッチ)氏の指揮のもと、「鍵付き完成引き渡し(ターンキー/ključ u ruke)」方式で進められた。

これは、設計・建設・清掃・スタッフ手配・万博終了後の撤去までを一括で請け負う契約方式である。

入札は日本国際博覧会協会(EXPO協会)のウェブサイトで公募され、付加価値税(PDV)込みで総額1,080万ユーロ(約18億6,000万円)の提案が採用されたと公式に発表されている。

つまり、セルビア政府が自国予算として1,080万ユーロを確保し、その実施にあたってはGLジャパン(GL events Japan)などが建設や仮設インフラ整備の一部を担っていた可能性がある
ただし、GL社が契約の主担当(元請け)だったのか、さらに上位の契約者から下請けとして関与していたのかは明らかになっていない

出典:magazinbiznis.rs「U Osaki na EXPO 2025: srpski paviljon građen po principu kljuc u ruke」(2025年6月29日公開)

セルビア館の未払い問題:現在トラブル中の2社

2025年7月11日にYoutubeで公開された「怒り爆発!工事費未払い 虚飾の大阪万博」では、セルビア館の工事に関わった少なくとも2社が、GLジャパンから計6,260万円の未払い被害を受けていると証言している。

GLジャパンの言い分:「クライアント(セルビア)が気に入らないから払わない」

画像:「怒り爆発!工事費未払い 虚飾の大阪万博」より

同動画内(9:09~)では、施工業者がGLジャパンから「セルビアが気に入らないからGLへも入金がない。D社への支払いは一切認められない」と伝えられたと証言している。
この発言は動画内で明確に紹介されている

セルビアは本当に「気に入らない」と言ったのか?

画像:セルビア内外貿易省より

セルビアでは「満足している」という報道

セルビア国内紙「Blic Biznis」の報道によれば、セルビアの万博担当コミッショナーであり内外貿易大臣のヤゴダ・ラザレヴィッチ氏(Jagoda Lazarević)はこう述べている:

セルビア館の来場者数は当初の予想を大きく上回っており、現時点で非常に満足しています。
来週には40万人を突破する見込みであり、これは大阪にとって素晴らしい成果であり、セルビア共和国にとってさらに意義深いものです。

施工に関する言及こそないものの、不満を示す要素は無い。
また、他のメディアでも「連日長蛇の列」や「食べログで万博会場内のレストラン中2位」といった評価が報じられている。

出展:https://www.blic.rs/biznis/privreda/vise-od-370000-ljudi-posetilo-srpski-paviljon-na-expo-osaki-ocekuje-se-rekord/wzn72f2 (2025年6月22日公開)

経済的な関係強化~EXPO2027 ベオグラードへの継続

画像: Expo2027 Beogradより

ラザレヴィッチ大臣は、日本との間で投資の保護および促進に関する協定を推進していると述べており、今後に向けて両国の信頼関係をより強固にしようとしている。

NHK「万博参加のセルビアが大阪で投資セミナー 閣僚トップセールス」(6月24日公開)

さらにセルビアは、「EXPO2027ベオグラード」の開催国としての準備を進めており、今回の出展もその一環である。
したがって、「クライアントが気に入らない」という状況は、外交的にもビジネス的にも考えにくい

日本から寄贈された「ヤパナツ」バスが引退 ~セルビアとの長年の友好の証~

セルビアでは報道されていない問題

この未払い問題は、セルビア国内のメディアではほとんど報道されておらず国民の多くはその事実を知らない。
だが、下請け業者が未払い被害を公にしている時点で、国際的な信用問題に発展しかねない

国家としての名誉毀損:GLジャパンに対し、セルビア政府は事実確認を要請すべき

学校で大阪万博の工作を作った小学生(ベオグラードにて撮影)

国家プロジェクトにおいて、セルビア側が「気に入らないから払わない」と支払いを拒否したのであれば、契約や国際マナーを逸脱する問題である。
しかし、もしGLジャパンの発言が虚偽であれば、自身のクライアントであるセルビア共和国に対する名誉毀損である

よってセルビア政府(または担当省庁)はGLジャパンに対し、

1. 発言の事実確認
2. 説明責任の要請

を正式に行うべきである。

この問題が一部の企業の責任であったとしても、「セルビア」という国家の名前が利用されている以上、その影響は広範に及ぶことを懸念すべきだ。