セルビア・ベオグラードの学校で男子(13歳)が発砲し10人が死亡 | 現地インタビュー

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この記事は2024年5月に更新されました。

事件について地元の人のインタビューしました

セルビアの学校で起こった銃発砲事件について、地元の人のインタビューをもとに詳細をお伝えします。

事件の概要

逮捕された少年 (Photo: Blic.rs)

セルビア学校で起こった発砲事件は、2023年5月3日(水)午前8時40分に発生しました。
ベオグラード中心部の学校で、13歳の男子生徒が銃を発砲し、警備員1名と8名の生徒が死亡しました。
その後、集中治療を受けていた女子生徒も亡くなり、最終的な死亡者数は10名となりました。

この事件はセルビア国内では前例のない学校銃撃事件であり、全国的に大きな衝撃を与えました。

*報道では14歳と発表されていますが、実年齢は13歳です。
セルビアでは14歳以上は少年院、18歳以上は刑務所という法律がありますが、この少年は14歳に満たないため精神病院に入りました。

1. 犯行の様子と被害者について

死亡した警備員・ドラガン氏 (Photo: Blic.rs)

少年は午前8時40分に登校し、最初に警備員の男性の額に発砲して殺害しました。
その後、入り口にいた女子生徒の頭部を撃ち、さらに校内で教師や生徒を標的にしました。
その後、裏庭に居るところを駆け付けた警察により逮捕されました。

犯行時、少年は非常に冷静だったとされ、ほとんどの被害者が1発の銃弾で即死状態だったと報告されています。
現場では50発以上の薬莢が発見されました。

病院に運ばれた12名のうち、8名が死亡、3名が集中治療室、1名が重症という甚大な被害となりました。

2. 犯行後は自身で警察に通報

連行される少年 (Photo: Blic.rs)

犯行後、少年は裏庭に移動し、自ら警察に通報しました。
学校で発砲した。自分の名前はコスタ・ケツマノビッチ」と名乗り、冷静に対応していたと伝えられています。

3. 父親の登録銃を使用・火炎瓶や殺害リストを所持

少年が書いた計画書

少年のバックパックからは、2挺の拳銃と銃弾、可燃性の液体を充填した瓶3本が発見されました。
さらに、特定の生徒の名前とクラスが書かれた殺害リストも見つかっています。

少年の自宅の家宅捜査で父親(医師)の名前で2挺の拳銃の登録が判明。
父親は「銃は暗証番号付きで金庫に保管していた」と主張していますが、息子は暗証番号を知っていたと推定されます。
父親は少年を射撃場に3度連れていき、射撃もさせていたと話しています。
この父親はセルビアの銃刀法にあたる「管理不行届」で同日逮捕されました。

4. 動機はいじめか?成績優秀だった少年

「セルビア学校事件 いじめ」というキーワードが象徴するように、今回の事件にはいじめ問題が関係している可能性があります。

少年は、現在のクラスで吃音(きつおん)をからかわれたり、身体的な暴力を受けたりしていました。
そのため、別のクラスへの移動を希望しましたが、学校側に拒否されました。
少年は疎外されたと感じ、彼をイジメた生徒への報復を決意したと語っています。

彼の両親も学校に相談していましたが、適切な対応がなされませんでした。
少年は成績優秀でしたが、「(両親からの体罰はなかったが)いつも好成績を求められた」とプレッシャーを感じていたと話しています。
特に、歴史の聞き取りテストの結果が悪かったことに不満を持ち、犯行の際に歴史の教師を重傷を負わせた(腹部と両手に発砲)とされています。

Photo: Blic.rs/Oliver Bunić

5. セルビア全土で大ショック・3日間の服喪

このような学校銃撃事件はセルビア国内では前例がなく、国全体が大きな衝撃を受けました。

政府は、事件の翌日から全国的な3日間の服喪期間を発表しました。
また、多くの親が「なぜ13歳の少年が銃を持ち、使い方を知っていたのか?」という疑問を抱き、少年と両親に対して怒りを示しています。
これは社会問題として大きく議論されています。

セルビア人はどんな民族?

セルビア人は社交的で話し好き・好奇心旺盛な人が多く、老若男女に関係なく初対面でも打ち解けます
タクシーでは助手席に座り運転手と(初対面でも)目的地まで喋りまくり外国人に道や時間を尋ねてくる、という風に人との間に垣根がありません。
外国人にも親切で、旅行者からは「言葉が通じなくても理解できるまでセルビア語で説明してくれた」という話しも聞きます。

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6. 追記:集中治療を受けていた女子生徒が死亡

事件発生後、ICU(集中治療室)に搬送された女子生徒が、2023年5月15日に死亡しました。
これにより、死亡者は合計10名となりました。

この生徒は、当日学校の玄関で当番をしていたため、最初に標的にされた可能性があります。

*セルビアの学校では当番制で2人の生徒が玄関で来客対応などします。
被害者は当日この当番でした。

(この記事は観光情報とは異なりますが、関心の高い記事として記載します)
Photo: Blic.rs, Oliver Bunić

7. 事件から1年後 (2024年5月3日)

学校近くの公園に植樹

Image: .telegraf.rs

事件から1年経つ5月3日、同学校には献花をする人が集まりました。

.telegraf.rs

学校近くのタシュマイダン公園には、犠牲となった警備員と生徒10名を偲ぶ木が植えられました。

犯人の少年は、復学を希望

現在、少年は精神病院に入院していますが、事件から数か月後には学校への復学を希望していました。
自分は普通なのに、なぜ学校に戻れないのか? 授業に遅れてしまう」と語っており、事件の重大性を理解していない可能性があります。

また、事件に使用された銃弾からは母親のDNAも検出され、父親と共に収監されています。

さらに、この事件の影響として、同じ学校の生徒が刃物を持ち歩き、友人に見せる行為が発覚するなど、学校内の治安にも影響が及んでいます。

まとめ

「セルビア学校事件」は、セルビア国内だけでなく、世界的にも大きな関心を集めました。
特に、いじめ、銃規制、家庭環境の問題が絡み合い、社会的な議論を引き起こしています。

今後の対応や法改正に注目が集まる中、事件の教訓を活かし、同様の悲劇を防ぐ対策が求められています。